こんにちは、たなかりんです。在宅でWebライターというお仕事をしています。
今日はちょっと寂しくも身の引き締まるような出来事があったので、記事として残したいなと思い、書いてみました。
Contents
通いの歯医者さんが亡くなられました
通いと言っても特別に親しい先生だったわけでもありません。
定期検診や歯周病の治療など、ちょっとしたトラブルがあるとやむなく出かけていた、
実家近くの医院です。
あまり行きたくないので、前回の通院から1年以上たっていました。
もっとも、私に限らず、歯医者が好きな方ってあんまりいないと思いますが(笑)
怖くもなく、かといって優しすぎず、不思議な信頼を感じる先生でした。
ちょっとぐらい(いや、かなり!)痛い治療でも、安易に麻酔は使いません。
高齢の先生だったので、安易に麻酔を使い、高額な治療費をいただくことに
疑問を感じているのかもしれない、などと、ひとり勝手に納得していました。
単に面倒くさいというのが本心だうろとも、思っていましたが、、(笑)
なにしろ高齢なので、一年ぶりに行くときは、
「先生はまだお元気だろうか?」
といつも少し不安でしたが、相変わらずの姿を見ると、ほっとしたものです。
歯周病の定期健診もあるし、いい加減に行かないといけないなあ~と
ちょうど思っていたところに、
知らない名前の歯医者さんから一枚のハガキが届きました。
「○○先生が他界されました」
…「そのため、私が今後の診療を引き継ぐこととなりました」…
このハガキを見た瞬間、さまざまな想いが胸の中を駆け巡りました。最初は、
「もう少し早く出かけていればよかったな」とか、
「ああ、せめて最後にもう一度、お会いしたかったな」と思いました。
けれど次の瞬間、自分の死後、患者さんが困らないように、
病院と患者さんを引き継いでくれる相手を探しておき、
こうしてハガキを出すように指示していた先生の心意気に感動しました。
毎週通っている馴染みの患者さんならともかく、
私のように年に1度も出向かない者にも、わざわざ案内を出してくださる、
その細やかな気配りにも感動しました。
新しい先生の元へ通院するかどうかは、私(患者)が決めることですが、
道は作ってあげなければ、患者さんによっては治療を中断してしまいます。
せっかく頑張って治療を続けていたのに、「自分の死」をきっかけに、
患者さんが治療をやめてしまうようなことがあってはならない!、
だから、ちゃんと道を作っておく。
先生は多分、それほどあれこれ考えて指示したわけではないような気がします。
自分が当たり前だと思うことを、当たり前に準備されていただけでしょう。
先生の「当たり前」は、多くの起業家にとって「当たり前」ではない
ほんの数カ月前のことですが、通いの整体院が閉店しました。
本店は別にあり、ほかにも数店舗を展開されていたようですが、要するに、
私が通っていた治療院は採算がとれず、赤字だから閉店することにしたわけです。
その話を、施術中に何度も何度も聞かされ、正直、かなりうんざりしていました。
この店舗の運営に月々いくらのお金がかかるだの、そのわりに患者さんの数は少ないだの…
「そんなことは私の知ったこっちゃない!!」
いつも心の中でそうつぶやいていました。
人間性はともかく、腕はよかったので、閉店するまで通い続けました(笑)
さて、閉店にともない、私もふくめ、こまる患者さんが何人かいるわけです。
いったいどんな対応をする気かしら?と、好奇心とあきらめの気持ちで反応を伺いつつ、
通院を続けました。
結論からいうと、なにもなし!(笑)
「本店に通ってきてくださいよー」と、冗談めかして1~2度言われました。
無理な相談です。いえ、行くこと自体は無理じゃありません。
車で1時間もかからない距離なので、心から信頼していれば、多分、通います。
残念ながら、そうまでして通う気にはなれなかったということです。
出店からわずか1年でもう閉店を考え始め、出店から2年で早くも閉店です。
これ以上の焦げ付きが出る前に、ということでしょう。
自分のふところ事情で頭がいっぱいになり、せっかく自分を信頼して
通い続けてくれた患者(お客様)のことをまったく考えられなくなっている、
あるいは、どうせほかの治療院に行くだろうと軽く考えてのことかもしれませんが、
なんともお粗末な幕引きです。
「そんな軽い気持ちで出店するんじゃない!、患者をなんだと思っているんだ!?」
声には出さなかった私の心の声が届いていたのか、最後の通院日に私を見送るとき、
深々と頭を下げていました。1年半ほど通院しましたが、初めてのことでした。
私はチェーン店はあまり好きではありません。個人経営の小さなお店や医院が落ち着きます。
ですから、同様のことはこれまでにも何度かありました。
会社の規模の大小に関係なく、無責任な幕引きを行う起業家は、決して珍しくはないんです。
不測の事態が起きたとき、人はだれしもパニックに陥ります
不測の事態が起きたときにどのような対応をするかで、その人の真価が問われます。
混乱して自分のことしか考えられなくなるのは、決してめずらしいことではありません。
気持ちにゆとりのあるときはおおらかで優しかった人が、別人のように豹変します。
だからこそ、事前にそなえをしておくんです。
例えば、冒頭でご紹介した歯医者さんのように。
上の整体師さんも、オープン当初はとってもいい人だった(に見えた)んですよ。
自宅の近くにこんなにいい治療院ができてラッキーだな!と喜びました。
信頼していたので、かつてないほど熱心に通院したし、たくさんの買い物もしました。
ところがこの幕引きのおかげで、なんともいや~な記憶として残りました。
どうしてほしかったということでもないのですが、
もう少し、何かしらのフォローをしようとしてほしかったですね。
最後に誠実さを感じられなかったのが残念なのかもしれません。
で、ちょっともんもんとしていたところに、歯医者さんのハガキが届きました。
自己チュー整体師のことは、やがて忘れるでしょう。
実際、ほんの数カ月前まで通っていたのに、ほとんど思い出すことはありません。
けれど、亡くなられた歯医者の先生は、とても誠実な方として私の記憶に永遠にとどまり、
なつかしく何度も思い出すでしょう。
大切なのは「信頼関係」
治療師と患者、請負人と依頼人、販売者と購入者、
いずれも関係の在り方に大きな違いはありません。
どのような関係においても、もっとも大切なのは「信頼関係」です。
なにも、好かれなくたっていいんです。
話が合わなくたっていいんです。
そりゃあね、好きになれて、話も合う方がいいですよ。
けど、好きだし話も合うけど信頼できない相手と、
あんまり好きじゃないし話も合わないけど信頼できる相手、
あなたはどちらとビジネスをしたいですか?
友達になりたい相手は前者ですよね、
でも、ビジネスを行うなら私は断ぜん後者です。
私がここでいう「ビジネス」は、要するに「お金のやりとり」です。
たとえば、治療に通う → お金を払います。
ライターの仕事を引き受ける → お金をもらいます。
商品やサービスを購入する → お金を払います。
いずれも信頼できない相手とは関係を持ちたくありません。
自分がそう思うからこそ、私自身も信頼される仕事をしたい、
不測の事態を想定して、ちゃんと対応できる人間でありたい、
歯医者さんのハガキは、自分の仕事に対する姿勢と責任の重さを、
再確認させてくれました。